
東南アジアの事業戦略とベトナム投資
イントロベトナム株式会社
目 次
Ⅰ.東南アジア戦略の長期的方向付け 3
Ⅱ.東南アジアへの投資の現状 5
Ⅲ.東南アジアの政治体制 6
Ⅳ.ベトナムの経済政策 8
Ⅴ.ベトナム投資の優位性 10
Ⅵ.ベトナムにおける100%外国資本企業の会社設立 12
Ⅶ.100%外国資本企業の会社設立申請必要書類 13
Ⅷ.ベトナムでの従業員の雇用について 15
Ⅰ.東南アジア戦略の長期的方向付け 東南アジア諸国は、民族的、宗教的、文化的にも世界の他の地域に比べ、はるかに多様であり、それら多民族を強引に一つの国家にまとめ上げている国が多い。一部の資本主義的合理主義の経済指標に照らし合わせて、実態とはかけ離れた経済理論を当てはめる見方をする向きもあるが、とても「経済統合」とか「自立的循環」ができるような土壌は持ち合わせておらず、21世紀初頭はせいぜい緩やかな「関税同盟」が出来上がる程度だと予想される。
1993年1月タイのアナン首相の提案により、ASEAN諸国はAFTA(ASEAN Free Trade Area アセアン自由貿易地域)をスタートさせ、共通効果特恵関税(Common Effective Preferential Tariff Scheme = CEPT)制度により2008年を目標に工業製品など域内関税を5%以下に引き下げることで合意した。その後実施を2003年に前倒し(ベトナムは2006年、ラオスとミャンマーは2008年)、さらに1998年のASEAN首脳会議において予定品目の90%についてCETP税率引き下げを2000年にまで繰り上げることで同意された。 自動車部品についてはBBC(Brand To Brand Complementation = 同一ブランド間相互補完)スキームにより、同一企業の製品であれば域内関税を半額にする、部品の地域内水平分業の促進も行われて、ASEAN産業協力(ASEAN Industrial Co-Operation)計画がスタートしている。
このような状況から、将来は電子部品・自動車部品を中心に域内貿易量の増加が見込めるが、さらに、インドですでにスタートしたように、世界共通データベースによる24時間稼働IT関連産業の発展は、情報インフラの急速な発展と共に各国に広がることは明白となっている。総じて、東南アジアとインドはソフトとハードの生産拠点として、世界各国と相互の依存度が強まっていくと予想される。 しかしながら、このような表面的な自由化と関税引き下げの影で、実態は非関税障壁による保護政策がとられている。 中でも、インドネシアは1594品目、フィリピンは980品目に制限を設けており、何をもって自由化と言えるのか疑わしい規制をする予定である。 95年7月、ASEANにベトナムが加盟し、ついでミャンマーとラオスが97年7月に、カンボジアが98年12月に加盟し、9ヶ国の工業化のレベルが違う国が集まる複雑な地域共同体を形成することになった。
汚職と密輸はアジアの文化であるかのごとく将来にわたり消えることはなく、このまま、一部の国だけが関税の引き下げを行なえば、それ以外の国に大量の消費財が流入し、その国の通貨を引き下げることは明白であり、関税同盟としてのASEANの機能は将来かなり問題を含むことになると考えられる。
一部のグループのためだけの「開発独裁・統制経済」という内向きな非自由化と外国資本の進出による世界的な再生産機構の一翼を担う「生産拠点」となる自由化のミスマッチが、安定した生産を求めるあまり脆弱な政治体制を追認するという行動に出るか、経済のグローバル化の波に押されて政治・社会体制そのものが変革をするかの岐路に立ち、どちらにしてもさらに不安定化を進めると予想される。 21世紀の東南アジアの地域経済は、このミスマッチと多民族間の抗争に宗教が絡み、さらに複雑な国別・地域別紛争を生ずるものと考えられ、これをうまく乗り切った国と混迷の度合いを深めた国との選別が進行するものと考えられる。
以上のような展望から、21世紀初頭の東南アジア地域への投資は、安価な労働市場を求め歩くジプシーのような投資から、事業・社員を守る危機管理・リスクヘッジの意味からも少なくとも2カ国以上にまたがる独自ネットワークによる安定した資本を最小限の投資で構築し、さらに地域・住民と融和し、長期的人材育成に取り組む伝統的な日本的経営手法による優秀な人材の発掘と、会社への忠誠心の醸成による事業運営が、もっとも適当であると考えられる。
Ⅱ.東南アジアへの投資の現状
80年代の後半になって、日本を中心とした外資の大量進出がアジアに始まった。円高基調と中国の対外開放政策により、投資の方向は中国に向かったが、1ドル100円を切るという極端な円高傾向と中国の投資環境の不備が明らかになるにつれ、93年からASEAN向け投資が見直され外資の進出が活発化した。<表2―1> インドネシアは世界銀行から「東アジアの奇跡」とまで絶賛された程、大型化学プラントを中心にした投資が先行したが、1997年タイバーツに端を発したアジア通貨危機は、それまでの外資依存、開発独裁に対する潜在化していた弱点をさらけ出す結果となった。外資がインドネシアで失った資産規模は2兆円とも4兆円とも言われ、東南アジア各国で不動産価格は大幅に下落し、各金融機関は不良債権を抱える結果となり、日本に遅れること4年で東南アジア版「バブルの崩壊」を迎えた。
日本企業のアジア向け投資は、中国、タイ、香港、シンガポールの順に企業数を増やしているが、ほぼ半数は同一企業またはグループ企業と考えられる。<表2―2> 96年以降は、日本の不況とリストラを受け、安価な労働力による仕入コストの削減の目的での進出が主流で、日本の空洞化を象徴する投資であると考えられる。テレビ、ビデオを中心とした電気製品、電子部品の「日本オリジナル」がいわゆる「日本への逆輸出」の傾向をさらに強めている。 97年以降、投資は生産拠点の新設・設立から現地法人の生産能力増強にシフトしており、製造品目の変更・コストパフォーマンスの見直しなど、国ごとの生産体制から国別の分業体制に転換する業務の再構築がなされていると言われている。(「東南アジアの経済」鈴木 峻著)
Ⅲ.東南アジアの政治体制
東南アジア各国の政治体制は、近年民主主義国家が増えてきたことは確かである。 シンガポールは人民行動党の事実上の独裁であり、言論統制も極めて厳しいといわれる神経質な国である。タイ・マレーシアは立憲君主制ながら内容は大きく違い、タイはクーデターによる軍部の介入から1990年民主的議会政治体制が取られている。反面マレーシアは、マハティール首相率いるUMNOの事実上の独裁で長期政権を継続している。インドネシアは、もともと多民族国家を強大な軍部の力で制圧してきたものが、98年5月スハルト体制崩壊後、混迷を深めている。フィリピンはマルコス大統領後民主制。ベトナムは共産党一党独裁の社会主義国。ミャンマーは軍事独裁政権(SPDC)。ラオスは緩やかな共産党独裁社会主義国で国力がないため政権はベトナムの庇護を受けている。カンボジアは内戦後民主化に進んでいるが、地雷撤去にはあと100年かかるといわれている。ブルネイは、国民の8割が公務員の石油依存国である。
言論の自由度、外国人の行動の自由度から言えば、タイとフィリピンは圧倒的である。あまりに自由で統制ができない不自由さはあるが、両国民とも自国の自由度を十分理解している。 1990年代の主役はシンガポールで、金融取引・貿易・株式市場で他国をリードしてきたが、一人あたりのGDPが26,000ドルを超えた辺りから<表3―1>経済の陰りが見え始めた。もともとが周辺諸国の経済発展の遅れを糧にして成長を続けてきただけに、周辺諸国が同様に発展をすると、人件費・賃料等生活費の高騰により外国企業の撤退が相次ぎ、テナントビルの空室が増えている。 98年インドネシアの暴動騒ぎの時、ジャカルタに支店を持つ欧米企業は、シンガポールを移転先に選ばず、オーストラリアの各都市に分散していった。しかしながら、シンガポール企業は株式市場・他国への投資等により資産を保有しており、90年代ほどの発展はないにしても、緩やかな経済成長を続けるものと予想されている。 シンガポール企業の最大のメリットは、証券税制にあり、キャピタルゲイン課税は原則非課税。配当課税も同一所得への二重課税を100%排除するインピュテーション方式を採用しており、会社が納める法人税は株主が受け取る際に生じる所得税の前払いとみなされ、株主である個人・法人ともに当該法人税相当を税額控除でき、納税の必要はない。 ホールディングカンパニーの存在意義を十二分に発揮できる制度である。
21世紀初頭の東南アジア経済はAFTAによるCETP制度に対する、政府介入の度合いにより経済発展が国別に選別されることが予想され、これは政治体制の経済への介入度合いにより左右されると考えられる。
タイ・フィリピンの自由度から両国は非関税障壁の撤廃に向け活動すると考えられるが、反対に他国は、自国企業・国営企業の擁護に走り「関税同盟」そのものをないがしろにする可能性さえ存在する。したがって、タイの現状の経済基盤からすると、当分の間タイとタイバーツが東南アジア経済をリードしていくものと予想される。2025年にはタイ・フィリピンの一人あたりの国内総生産は倍増しているものと考えられている。<表3―2>(「東南アジアで良くなる国、悪くなる国」吉原久仁夫著、東洋経済編) 反対に、インドネシアは政治的混迷を引きずり、外国資本の再投入はすぐには考えられないために国内企業の擁護に動き、マハティール首相率いるマレーシアも一部の特権企業に対する擁護に動き、シンガポールも内向きで神経質な政策をとるものと予想される。 それ以外のやっと経済開放が始まったばかりの国々、ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマーは、現状の国内総生産が低いために、大規模投資一つで経済成長率が上向いたような錯覚を与えるが、近隣諸国との消費財価格の平準化が進行するため物価上昇は避けられず、国際競争力のある輸出製品がただちに増えるとも考えられないため、苦しい経済運営を強いられるものと考えられる。
しかし、その中にあってベトナムは、原油・天然ガス輸出、水産物・米・コーヒー輸出の原動力を持ち合わせていることから、政府規制の緩和、国営企業の民営化を推し進め、優秀な労働力を活用できれば、他国とは違った発展をする可能性を含んでいる。
Ⅳ.ベトナムの経済政策
ベトナムにとって長年の懸案事項であった米国との国交正常化が95年7月に樹立され、2000年7月には米越通商協定基本合意に基づく最恵国待遇付与を受け、ベトナム国内法の整備に取り掛かっている。 経済開放政策は時間を要しているものの着実に世界的な認知を受け、「世界の最貧国」ではなくなりつつある。<表4―1> このように経済は開放したが、実はそれ以外の分野は開放していないのがベトナムの現状である。
もっとも顕著に表れた現在のベトナム政府の考え方は、96年に開催された第8回共産党大会で採択されたドイモイ政策再確認の基本路線で ① 民族独立と社会主義体制の固持 ② マルクス・レーニン主義とホーチミン思想の保持 ③ 多元主義・複数政党制の固持 ④ 対外関係の更なる発展と封鎖・孤立状態の打破 また、2020年までの経済目標を ① 工業国の仲間入りを果たすこと(GDPを90年比8~10倍) ② 国営企業が再び主導的役割を果たすこと ③ 個人、民間分野の更なる成長も念頭におくこと ④ 2000年までに一人あたりのGDPを90年比で2倍にすること 等がうたわれた。(上記②の草案は「国営企業がGDPの60%を占有する」という表現を、内外の苦情が殺到し60%を削除した経緯がある。) この草案にみられるとおり、国営企業による社会主義体制を6割、経済の開放政策による市場経済を4割までとすることで、何とか共産党体制を維持しようとする、微妙なバランスを保とうとしている姿が浮き彫りになった。
マルクス・レーニン主義を棄てたソビエト・東欧諸国が、西側自由主義経済に移行したために、競争力の無い企業と従業員は職を失って苦しい生活を強いられている世界情勢から、ベトナム政府は「彼らの実験は失敗した」としてベトナム独自のホーチミン思想に基づく社会主義国の建設をめざしている。 ホーチミン思想の原点は祖国統一と清貧の教えであり、我利・我欲で動く他国の政府首脳とは違った崇高なまでの尊敬を未だに集めている。
ベトナムの国営企業は、市場主義経済の競争原理にさらされ、内部改革を迫られている。 90年には1万2084社あった国営企業も、大胆な統廃合が繰り返され、95年7月には5873社にまで減少した。しかし、資本金ベースで換算するとこの統廃合もわずか5%の整理でしかないとも言われ、従業員も含め、統合による会社数の減少でしかなかったことを意味する。 98年の工業生産高に占める国営と非国営、外資の比率を見ると46%, 22%,32%となっており、赤字の国営企業が未だに5割近くの比重を持っているが、95年には66%であったものが46%と3年間で激減しており、国営企業製品の経営効率の欠如による国際競争力の無さを露呈している。
このような状況から、ベトナム政府は外資導入による工業化を積極的に推進することを表明し、従来の各種申請手続きに要した期間を短縮するために、各地方人民委員会に投資に関する許可権限を付与した。 しかし、その後の1999年2000年の国会では、一部の申請手数料の緩和、貿易業務の一部の緩和などまったく小手先の法改正のみを行い、外資導入政策とは反対の保守的な動きに終始した。これは、経済の一部自由化に伴う弊害といわれる、汚職・腐敗の横行、犯罪の多発、環境汚染、都市部への人口集中、反政府的情報の流入など、政府がコントロールできない状況を生み出したために、一部保守派からは「外資はもういらない」という意見まで出たと聞いている。 ベトナム政府は、関税職員の汚職一斉摘発、麻薬取引の温床といわれるディスコの閉鎖など一罰百戒を狙った刺激的な行動に出ているが、一度身についたものは消えるわけは無く、さらに巧妙に深く根を張ってしまった。
今後のベトナムの経済政策は、世界経済に呑み込まれていく近隣諸国に対し自国だけが目を閉ざし再び鎖国状態に陥る孤立化を選択することもできず、かといって中国に擦り寄っていくことも歴史的に考えられないため、ASEANという政治的防波堤に頼り、ASEAN域内での分業体制と工業化投資の中心である日本企業を極端に重んずる方向に向くと思われる。 しかし、IT産業の発展により、言論統制、検閲、情報操作などはほとんど不可能になることから、「ホーチミン思想」を堅持した政治体制の変革が迫られる時期が到来することも考えられる。
Ⅴ.ベトナム投資の優位性
<表5―1>東南アジア各国の主要投資関連コスト・経済指標比較によると、ベトナムの3.5ドルの年間土地使用料は、50年契約により1平方メートルあたり175ドルとなり、他国に比べ割高となってしまうが、実際のところ1997年からの外国投資の減少により、工業団地の未契約率は68%、テナントビルの空室率も70%を超えており、土地使用料も工業団地によっては、契約時点の交渉により約半額にまで落ち込んでいる。1.75ドル/㎡×50年間を日本円に換算すると坪当たりの土地単価は30,943円となり、ASEAN他国の工業団地取得金額と大差の無い程である。何も無かった土地に外資が電気・水道・排水処理施設等のインフラ整備のための投資を行なった結果、投資金額が膨らんだために設定されたが、このように、ベトナムでは交渉により金額が決定される。
また、電気料金も新設の発電設備による給電であり、一般ベトナム人家庭への電気料金を極端に安価に設定しているため、外国投資企業には高く設定するという価格の二重構造から、他国の10倍ほどの高額である。99年7月に投資環境の改善策としてこの二重価格の是正に着手し、工業団地の外国企業向け電気料金は18%ほど値下げされた。
これらの他国に比べて割高な投資環境と、法律の未整備による手続きの煩雑さ、97年からのアジア通貨危機、日本の不況などがあいまってベトナムへの外国投資は96年をピークに減りつづけている。<表5―2>しかしながら、2000年の投資実績(予想)は、新設の火力発電所等の大型投資案件を除くと、既存の投資企業の設備増強・工場増築に伴う増資などの追加投資金額が30%以上を占め、企業活動の定着度が増している状況である。また、2000年1月からの投資実績は韓国企業が自国経済の回復と共にその数を再び増やしている。一度は自国経済のIMF管理から、ベトナムから撤退した韓国企業が、再び戻ってきている。
このように、既存企業の増強、カムバックの最大の判断材料は、やはりベトナム人労働者の優秀さと賃金の安さが認知されたと考えられる。 タイ人は与えられた仕事を黙々とこなす。中国人は同僚をいかに蹴落とすか考えながら仕事をする。ベトナム人はいい製品を作るにはどうしたらいいのか、考えながら仕事をする。こんな話に反論する投資企業は皆無に等しい。かつて日本のTVメーカーの工場で、世界中の工場の提案件数の内、採用件数が最も多かったのがベトナム工場であったという話もある程である。 労働生産性の高さと賃金の安さは、製品価格にただちに跳ね返るが、これに加えて、アメリカからの最恵国待遇付与によりベトナム製であれば関税が基本的に5%に抑えられることから、アメリカでの市場の拡大も見込まれる。 ベトナム政府も外国投資に関する手続きを簡素化する方向で進んでおり、電気・水道・工業団地・外国人用住居・道路・港湾等、投資環境はここ10年間で一応すべて用意された。
しかし、市場メカニズムの広範な浸透が見られる一方で、貧困層の拡大と就学率の低下を招いている。1993年世界銀行の調査で平均月間所得4万一千ドン以下の貧困層は、この年の総人口の50.9%。1998年のベトナム政府調査でも37.4%であった。減っているように見えるが、物価の上昇分を差し引けば、ほぼ同水準のままである。
この影響で「経済的理由」による不登校が増え1997年の就学率は 小学生 6~10歳 78%中学生 11~14歳 36%高校 15~17歳 11%高等教育機関 18~24歳 2%(大学・職業訓練校)成人 非識字率 男性 5% 女性 11% 高等教育機関への就学率は1987年当時より半減している。(「東南アジアの経済」北原 淳、西口清勝、藤田和子、米倉昭夫著世界思想社編) 今後大卒の新卒者は貴重な存在となるであろうし、企業内教育の充実も求められてくるものと考えられる。さらに、学歴別・能力別評価等の人事考課制度の導入により、向上心の醸成も必要になってくるものと考えられる。
Ⅵ.ベトナムにおける100%外国資本企業の会社設立
100%外国資本による会社設立は、設立できる区域、建物が決められていて、自由に設立場所を選定できません。 また、電気・通信・貿易・鉱業などの事業分野では100%の外資企業設立は認められていません。 さらに、会社設立申請にあたって、ライセンス取得期間を設定する必要があります。Industrial Zone(工業団地)、Export Processing Zone(輸出加工区)の場合は通常土地契約期間50年。IZ、EPZ 以外の場所での会社設立申請の場合は原則20年で設立許可を受けています。特例として現在は70年の事業許可も取得可能になりました。このライセンス取得期間全期間の土地使用権代金を支払う必要があり、分割支払ができないため、投資規模は膨らみます。
このように、ベトナム国内企業の育成と外国資本によるベトナム市場での独占的活動を避けるために、100%外国資本による会社設立には数々の制約を課せられています。しかし、1991年以来、合弁企業の設立による事業活動が主流となっていましたが、一旦投資スピードが減速した1997年の調査によると、合弁企業の実に80%以上が赤字で、ベトナム側パートナーとの連携に何らかのトラブルを抱えていることがわかりました。これを受けてベトナム政府は、外国投資を促進するために1999年2000年の外資法の一部改正により、ベトナム民間企業の育成と100%外国資本企業の事業分野の一部緩和を行いました。これにより、IT関連の事業分野を中心に、急速に会社設立が増えています。 IT関連の外資企業は、IBM、マイクロソフトなどすでに50数社がライセンスを取得しており、100%外資企業のライセンス取得期間は、概ね事業の性格上20年以内で許可されています。 会社設立申請の関係書類はすべて、このライセンス取得期間に従って事業計画を立案する必要があります。20年間のライセンスを申請するのであれば、20年間の事業計画を作成しなければなりません。
会社設立申請書類は、すべて英文・ベトナム文で各8セットを用意し、会社代表者が全ページにサインし、日本・ベトナム両国での公証が必要になります。
Ⅶ.100%外国資本企業の会社設立申請 必要書類 Ⅰ.土地仮契約書 ①土地使用許可書 ②地質調査結果報告書 ③境界明示関係書類 ④土地使用権売買仮契約書 ⑤給電・給水・排水設備図面Ⅱ.建物建築見積書及び設計図面 ①土木工事・建築工事見積書 ②輸入建築資材一覧表 数量・相手企業・生産国・見積書 ③国内調達建築資材一覧表 ④設計図面・設備図面・レイアウト図・工程表 ⑤電気工事設備図面・使用機器・調達先一覧表 ⑥排水・排煙 処理設備図面Ⅲ.建物賃貸の場合の必要書類 ①外国企業 使用許可書 ②賃貸借契約 仮契約書 ③内装工事図面・レイアウト図・工程表・見積書 ④内装工事・電気設備 輸入資材一覧表 品名・数量・相手企業・生産国・見積書Ⅳ.会社設立申請書 ①会社設立申請書 ②Investor 会社プロフィール (a)事業概要 (b)経営計画 (c)ベトナムとの事業実績 ③会社案内パンフレット ④決算書 2期 (監査報告書添付) ⑤登記簿謄本 ⑥会社定款 ⑦銀行残高証明書
Ⅴ.FS(Feasibility Study) 会社設立申請書内訳(Economic-Technical Justification) ①新会社名・所在予定地 ②事業目的 ③新会社の事業計画 解説 ④新会社の世界市場 解説 ⑤製造物 解説 ⑥製造工程 フロー解説 ⑦生産計画・販売計画 ⑧原材料 調達計画 一覧表 ⑨納品先・納品方法 ⑩輸出比率解説 ⑪使用土地・建物の説明 ⑫人員計画 ⑬採用・教育計画 ⑭電気・水 使用計画 ⑮通信設備 使用計画 ⑯設備導入計画 ⑰新会社 P/L 売上高構成・原価構成・販管費計画 ⑱新会社 B/S ⑲利益処理計画 ⑳廃棄物・排水・排煙・焼却物 処理方法解説 環境アセスメント
Ⅵ.添付書類 ①新会社 会社定款 ②年度別輸入品目リスト (a)設備・備品 リスト (b)原材料 輸入品リスト 品名・型番・メーカー名・搬出国・数量・金額
Ⅷ.ベトナムでの従業員の雇用について
ベトナムにおける従業員雇用については、1995年1月1日施行の新労働法により規定され、個別労働契約書、労働組合との労働協約のモデルフォームも提示されています。
ベトナム人の雇用についてベトナムでの日本人雇用について日越労働法の異なる条項(抜粋) ベトナム労働法により、外資系企業は次のいずれかの方法でベトナム人労働者を雇用するものとされています。
地方労働事務所(政府機関)の紹介による採用 地方労働事務所の契約派遣社員の採用 上記1.2.で必要とする者を採用できなかったときは、独自広告による直接採用(この場合、現地労働事務所に登録)
上記1.2.の採用の場合、事業者は地方労働事務所に労働者の賃金を支払い、労働事務所は自らの手数料・社会保険料本人負担5%・個人所得税を引いて本人に支払う、賃金の間接支払方式がとられています。 また、社会保険雇用者負担は賃金の15%です。 直接雇用、直接支払の場合は、労働者が自ら労働事務所に申告し、社会保険料、個人所得税を支払うことも可能になっています。 労働法施行上のいくつかの法的不備により、個別契約の確実な実施は行われていませんが、99年のベトナム大蔵省の通達で、外国資本企業の誘致促進策として、現地通貨ドンよる契約・支払が可能となりました。これにより、各地区の最低賃金もドン表示に変更されました。
ベトナムにおいて、日系企業・日系駐在員事務所に日本人を雇用する場合の、関係法令は次のとおりです。
日本国内の雇用契約に基づき、ベトナムに駐在する場合と、ベトナム現地法人あるいはベトナム駐在員事務所で日本人を直接雇用する場合の2つに区別されます。
日本国内での雇用契約によりベトナムに駐在する場合 ①駐在員として6ヶ月のマルチビザ取得可能。 ②日本の給与の一部を、ベトナムに送金されているものと解される。 ③年間183日以上のベトナム滞在の場合、ベトナム国内で課税、日本では非課税。課税対象金額はベトナムの税制による。 ④社会保険は、日本法人の社会保険に加入可能。 ⑤ビザ取得・個人所得税の申告以外の政府関係への申請等不要。 ベトナム現地法人又はベトナム駐在員事務所との雇用契約により直接雇用する場合 ①べトナム人では要求に応えられない高度な専門的技術又は管理業務について一定期間に限って認められる。 ②この場合、労働許可を必要とし、ビザを取得する。 ③労働許可及びビザ取得のための手続き a)雇用契約書 b)被雇用者申請書類 労働許可申請書、居住地区人民委員会の許可書、 専門業務・技術の証明書、履歴書、写真4枚 c)雇用者申請書類 雇用許可申請書、法人設立許可書コピー、雇用契約書、 工業団地又は事業許可発給者の許可書 ④個人所得税は、上記2と同様。 ⑤採用が許可された後は、労働事務所への登録が必要です。
ベトナム労働法第131条の適用について
ベトナム労働法第131条「外国投資に関する法律により設立された会社及び外国企業の支店・駐在員事務所で働くすべての労働者(ベトナム人及び外国人)は、すべてベトナムの労働関連法規の適用を受けるものとする。」
この条文は、ベトナム労働法が定める水準を下回る労働条件で雇用された外国人労働者を、救済する目的と、ベトナムの国民の休日等を遵守させるためのものと解されており、外国企業の個別の労働条件を本国と照会して遵守させるようなことは、もちろん行われていない。ただし、日本の労働3法より上回る条件(時間外50%増、休日労働100%増、退職手当半月分以上、政府規定の賃金体系に基づく昇給等)があるため、ベトナム現地採用者の労働条件にはベトナム労働法の遵守が必要となる。
以上のような状況から、手続き上煩雑な現地法人による直接採用を避け、ベトナムに進出する日系企業の日本人の採用にあたっては、ほとんどすべての企業が、日本法人との雇用契約による現地駐在方法を採用している。日本の勤務カレンダーとの差とか、時間外労働・個人所得税を包括するために、「海外駐在員手当」「海外管理職手当」「海外業務手当」等を付加し、日本国内で雇用契約を締結し、日本での社会保険を付与している。また、近年は、業務委託契約により海外駐在員業務を専門業者に委託する例もあるが、委託業務内容を詳細に明文化する必要がある。
ベトナム駐在員の雇用契約締結にあたっての注意点
①人の適正をただちに判断する管理者が複数存在しないために、2~3年間は期限付労働契約による適正把握が必要である。 ②あくまで日本の労働法の適用を受けることを前提として、本社の就業規則を開示し、適用を受けない個所を個別雇用契約により明文化する必要がある。 ③時間外手当、休日労働、深夜業に関する規定は「海外管理職手当」等の付加により、就業規則の適用を受けない旨を明記する。 ④日本及びベトナム内外の出張旅費規程を明記する。 ⑤退職手当、解雇予告期間等の日越労働法の異なる条項については、個別雇用契約で明記する。
(ア) 労働契約の契約期間 日 本 ―1年を超える契約はできない。自動延長の繰り返しにより期限の定めのない労働契約と解される。 ベトナム―期限を確定しない契約、1年から3年の契約、1年未満の季節又は一定業務の契約の3種類。
(イ) 試用期間 日 本 ―14日を超えた場合は、解雇予告適用ベトナム―専門技術者60日以内、その他30日以内。賃金70%。
(ウ) 解雇予告 日 本 ―1ヶ月ベトナム―無期限労働契約は45日、期限付労働契約は30日 特殊労働契約は3日前まで
(エ) 退職手当、失業補助金 日 本 ―規定なしベトナム―退職手当、勤続1年に付半月分給与 失業補助金、リストラによる解雇の場合勤続1年に付1ヶ月分給与(最低2ヶ月)
(オ) 時間外手当 日 本 ―時間外25%、深夜業25%、休日25%、基礎―手当含まずベトナム―時間外50%、深夜業30%(時間外深夜業35%)、休日100% 基礎―手当含む
(カ) 昇給 日 本 ―規定なしベトナム―政府規定の賃金等級表による昇給、管理職も規定あり。
(キ) 賞与 日 本 ―規定なしベトナム―1年以上勤務者に1ヶ月以上
(ク) 年休日 本 ―6ヶ月勤務後に10日、以後1年ごとに1日加算ベトナム―1年勤務後に12日、重労働者14日、以後5年ごとに1日加算、退職者・年休未消化者から年休買取
(ケ) その他 ベトナム―退職理由・解雇理由・慶弔休暇を明文化
<参考文献>
以下の資料を参考にさせていただきました。
1. 「東南アジアの経済」鈴木 峻著、御茶ノ水書房 2. 「東南アジアで良くなる国、悪くなる国」吉原久仁夫著、東洋経済 3. 「東南アジアの経済」北原 淳、西口清勝、藤田和子、米倉昭夫著 世界思想社 4.「ベトナム」ARCレポート、世界経済情報サービス 5.「アジア経済1998、1999」経済企画庁調査局 6.「‘98海外進出企業総覧・国別編」東洋経済新報社 7. 京都大学東南アジア研究センター資料 8.「アジア主要都市・地域の投資コスト比較」JETRO 9. ベトナム計画投資省発表資料
2000年11月
イントロベトナム株式会社
大阪府大阪市中央区日本橋1丁目3の1 TEL:06-6213-8191 URL:http://www.vietnam.co.jp/ E-mail:intro@vietnam.co.jp
Copyright ©INTRO VIETNAM INC.,2000,All RIGHT RESERVED
|